日報

もしくは遺書

りゅう

空へ落ちていくもの

陽だまりの午前に


葉脈を透かして


息もできないほど


これは何だろう


水の中にいるみたいだった


諦めるのも悪くないと思った


魂の震えを知覚する


時計の針を少し進める


昨日と同じ歌を口ずさむ


あの記憶


トンネル、海


粉々に割れた硝子みたいになりたい


君に関することならすべて受け入れたい


言葉、言葉、踊るように


世界は終わらない


だって世界だから


ビー玉を転がす


影を踏む


水の中にいるみたいだった


年をとるのも悪くないと思った


白い湯気が音もなく消えていく


空へ落ちていくもの


未来を懐かしむような感覚


まだ出会ったことのない友だちを思いやる


君の声がつくる柔らかいゆらぎ


君だけがつくれる


花を飾るときの気持ちで


よかった


平等ではない命のすべてを平等に許すために


春はくる

 

 

西陽の射す部屋を温かい水に沈める


強く打つ鼓動が道しるべになる


君にしか拾えない言葉にさわる


髪が風にゆらぐ


オルゴールのねじを巻いたら


もう一度あの記憶を再生しよう


祈るように小さな翅をひろげた


皮膚の震えかたで音楽を知る


白い深い虹、遠くの、影、回転する粒子


右、左、日向、雨、目に見えない力


知らない人のやさしさ


未来から過去へ、踊るように流されて


永遠の中で泣き続けた


悲しみ、慈しみ、二重螺旋を降りて、降りて


雪、すべての上に


壊されて


奪われて


誰かが怒ってる


遠くから波のように伝播する


TOKYO2020の残骸


子供たちはただ遊ぶために遊ぶ


ありがとう


カレンダーに印をつける


欠片を拾い集めるように生きる


街灯に光が灯りはじめる


この時間帯はすべてが青く見える


君の罪を少しずつ引き受けよう


君の痛みを少しずつ馴染ませよう

 

忘れていた約束

冬と春の混じり合った朝の気配


失われた海の上で目覚めて


羽根があったらいいのにと思った


さざ波とひとつになる


鼓動の上に静かに音符を乗せていく


誰もいない


窓枠から光


虹色に光る白に近いところに触る


生きている人も死んでいる人も


昆虫の足音


誰からも愛されなかった子も


深く温かい穴の中


小さくて勇敢な鳥


風を切って


忘れていた約束を思い出した


僕の夢と君の夢の交わるところへ


風に抱かれて


花を飾った病室の匂い


その静謐な扉


言葉が必要だった


すくっては零れる光


いなくなった後も頼りなく輝く


裸足で花びらを踏んで歩く


未来から過去へ日記帳がぱらぱらとめくれる


会いに行かなくちゃ


言葉にならない言葉が必要だった


風の真ん中で


金色の粒を食べる


横たわる君の影を慈しむ


風景は後ろへ、後ろへ


僕の失われた海と君の失われた海の交わるところへ


迷子のまま行こう