日報

あるいは遺書

りゅう

いつもそうしていたい


ふと笑みがこぼれて


花が咲く瞬間を知っている


金色の風


完全な環


心が溶ける


何も持ってないしいらない


明日の記憶を飲んで


列車に乗っていく


大好きな声が木霊する


未知帰り満ちる


寄せては返しながら


悲しみの正体を暴く


手を伸ばす


考える前に記す


憶えていたいのに


昨日を元通りにして


虹のふもとの村で


いつか辿り着いて


またどこか遠くへ


ささやかな喜び


慈しみ詩みたいに死にたい


季節についてほとんど何も知らない


仕事をしてゆく


もう帰れないんだ


命が宿る場所で


仰向けに寝転がって


形のないものの木漏れ日


同じだけど同じじゃない


抱きしめたい


離れていても鼓動を感じる


周波数の中を泳ぐ


蛙みたいに


おたまじゃくしみたいに


光に濡れて


信じたいものを信じて


跡形もなく消える


なんとなく動けなくなる


夜に咲く花の香り


トンネルを抜けて


祠へ


まあいいか


赤ちゃんみたいに


ただここで過ごす


するするとほどける


取り残されては繋がる


耳鳴りが音楽に変わる


精霊が天を仰ぎ見る


あの水の流れ方


もう痛みは感じない


信号が点滅する


死んでもまた会いたい


コーヒーを飲んで


自分の小ささを意識する


鋏で切り分けていく


粛々と元通りにしていく


鍵盤の鳴らし方を憶える


透明になりたかった


でも君を傷つけたいわけじゃない


溢れだすもの


指先を浸して


点と線を繋がなくてもいい


沈黙を撫ぜて


その揺れ方と一つになって


もうしばらくここにいられたらいいのに