日報

あるいは遺書

りゅう

迷う


霧の中


冷たい水の底


開けてはいけない扉


何故、わたしは今


腐った肉


澱んだ空気


窓を開けなくては


埃だけが積もる


時空が柔らかく曲がる


ここはどこでもない場所


嘔吐する


未知の生命が繁殖する


放射線がわたしの内側を焼く


完全じゃない


忘れている


欠落している


気配だけが残る


幻の痛み


白と黒の鍵盤で正解を探す


赤い空


わたしはまた失う


何をしてももう遅い


逃げるように眠る


いらないものを捨てなくては


できるだけ小さくなる


光の帯が遠ざかる


宇宙遊泳


同じ場所をぐるぐる廻る


自分の名前が思い出せない


帰る場所ももうない


整然と墓が並ぶ


こんな姿を見られたくない


冷たい土


やがて季節は移り変わる


風が木々を揺らす


葉脈から水滴が垂れる


虹の輪


時計の針の音


わたしを満たしているものは何


真っ暗な大きな穴


恐る恐る覗き込む


くすんだ色の写真


浮かんでは消える泡のよう


離れ離れ


風、風、風


誰もいない


手を伸ばせば届くかもしれない


不安や孤独は静かになって


わたしの中のわたしたちは


ゆっくりと空に広がっていく