日報

あるいは遺書

りゅう

喪失は虚無ではない

空を覆う冷たい気流


ここにいることが正しいと思う


笑顔の断片


自転車で坂を下る


街が配置されていく


離れながら繋がる


バラバラになりながら知る



幽霊が揺れる


青く輝く


黒い服を着た人たち


耳鳴り


うつむく花


雨粒のリズム


つんとした匂い


君は逃げる、どこまでも


風をあつめて


風を逃がして


移動していく


街から街へ


列車に乗って


くたびれた座席に座って


車窓を眺める


規則的に揺さぶられて


催眠に落ちる


何かの前兆のような鋭い音


空の彼方で渦を巻くもの


本当の記憶に触れる


鮮やかな沈黙を奏でる


宇宙の始まり


時間の終わり


密度の濃いところと淡いところが同時にある


バランスを取るのが大切なのだと思う


温かな死の気配


夢と現実の感覚をより一層憶えなくては


だんだん透明に近くなって


いつの間にか姿を消した


木立のざわめき


微かな震えに意識の焦点を合わせていく


思いきって飛び込む、柔らかく飲み込まれる


ページがめくられる


誰のための物語だろう


自分自身の存在をひどく頼りなく感じる


日々の割れ目にそっと寄り添う


俺には感情がある


なんとなく良くなるように


鳥は飛び立った


ほんの少しの愛しさがあなたを変えた


時間は前にしか進まない


一つ一つ数える


喪失は虚無ではない


言葉を使って切り分ける


なるようにしかならないならそれでいい


強くも弱くもありたい


手を合わせる


環をつくる


水面の波紋


小さな響き


さようならの声が導く


敬意を持って


運ばれていく