日報

あるいは遺書

りゅう

台風の前

台風が来る


耳を澄ましている


からだの中の水が少し


重くなったような気がする


窓辺に座って


不和を抱く


急速に沈静化する


私の中の景色の中を


辿って


なぞって


交互に縫う


うつくしさが染み渡る


小さな響き


記憶とは違う方法で憶える


色も形もない世界で


同じ波長の友だちを探している


季節がやってくる


大きな回転について思う


光を浴びて光を食べる


悲しみが必要だった


思いきって窓を開ける


風が吹き込む


何もかも乱されて


浮足立つ


何もないと思う


私には何もない


心地いい


いつも同じ


ここに戻ってくる


だけどもう少し続けたい


月の欠片、満ちる欠ける


不安と期待、喜びと痛み


両手をひろげると羽根がひらく


音楽がなくても踊れる


命の波動


街の灯のきらめき


夏の夜


雲と一緒に流される


蝶の飛び方で


永遠を知る


それを手放す


そしてまたつながる


子宮から宇宙へ


未来から過去へ


思いもよらない場所で


あの時の片鱗に触れる


嗅覚によって


進むべき道が開ける


西日の射す部屋


虹の白い部分


今はこの孤独に包まれていたい


騒々しい想像力


地球の上を駆け巡る


またあの祠の前にいる


揺らぎ