日報

あるいは遺書

りゅう

ほころび

デオキシリボ核酸の声がして目覚める


風景を淡く淡く描く


弱さも優しさだと思う


列車に乗って、どんどん後ろへ


雨が踊って跳ねる


何かの模様が浮かび上がる


この世界で果たす役割


耳元で鳴る透きとおる雷鳴


感謝の言葉、別れの仕草


代わる代わる満ちる


感じたい


水の中で揺れていたい


花の波動を浴びて


次の街につく頃には


多分忘れてしまうことがたくさんある


君の記憶の中に入りたい


何も知らないような顔をして



神々しい涙の海


無力な指先を浸す


時間が渦を巻いて


粛々と日常を行く


痛みを切り分けていく


白く澱んだ疲れを引きずって


弱い者が更に弱い者を守る


煙草の煙が青い空に溶ける


ふとした瞬間に意味を感じる


使い古した積み木


生き物の匂い


愛しいほころび


夢とうつつの間をたゆたう


またここに戻ってくるだろう


忘れたくないことを忘れてしまう


わずかなむなしさだけが残る


右と左を交互に踏み出しながら


真ん中から聴こえる音を数える


喜びと悲しみが深く絡みついて


希望も絶望もすべて打ち消した


うずくまる


胎児の姿勢


ここからどこへ?


黒と白とその間


寄せては返しだんだん変わる


数字だけがひとりでに前に進む


100年後の自分に花を贈りたい


人は一人では生きられない


柔らかく壊れてバラバラに分解される


絆はいつかほどける


光だけが波のように押し寄せる


形のないものの木漏れ日


しばらくの間黙っていようと思う


鼓動の音をどこか遠い国のできごとのように聴く


この場所の呼吸に合わせていく


完全な存在でなくてよかったと少しだけ思う


意識の回路に微かな温かさが通う