日報

あるいは遺書

りゅう

胎児の姿勢

たくさんの泡


食べる


細胞が分裂を始める


大切な記憶を持って


身体の力を抜いて


その時を待ち受ける


喜びと悲しみが絡みつく


みちがえる


変わってしまった


同じなのに


左右非対称の愛


雨の中


目的地がない


病室の花


知らない街


忘れていく


眠っていく


知らない間に魚になった


鼓動が意味をなくす


青い揺らめきに運ばれて


もう戻れない


ただ嗅覚の指し示す方へ


未来の暗示


たまらない


屋上から飛び降りる夢


傷の入口から弾ける色


たくさんの景色を見送って


あの澱みが少しだけ懐かしい


空間と私の境目はない


逃げながら追いかける


夏の匂いがし始める


雨上がりの空に虹がかかって


同じ出来事の反復


リフレイン


冷たい温もり


手に手を重ねて


未来から過去へさっと駆け抜ける


昆虫の足音に耳を澄ませる


何もかも全部忘れた頃に


天使が降りてくる


深く、深く


なにから話そう


君の影


歌にして


トンネル、海


飛び越えて


遠くから震わすざわざわ


凍る夜の物語


輪郭の揺れ方を憶える


胎児の姿勢で


まばたきをする


教えられたい


すべてを受け入れたい


涙が頬を伝う


いつも鳴っていた音に気づく


今からでも遅くない


思い切って飛び込む


風船になってゆっくりと空に堕ちていく


形の蠢き


手のひらを信じて


光の溢れる方へ


伸びていく


葉脈を透かして


金色の粉を胸いっぱいに吸い込む


どこにでも行ける


誰にでもなれる


生まれてから死ぬまで


死んでから生まれるまで


平衡感覚を保つ


思うまま笑みをこぼす


一つ一つやっていこう


行ったり来たりしながら