日報

あるいは遺書

りゅう

無題

波が透明な砂をさらうたびに


愛しい窓辺、カーテン、くるくる


翻し繰り返す


お姫様になりたい女の子


お姫様になった女の子


飛べない鳥の歌が好き


花の匂い


妖精の飾り


誰かの言葉が引っかかる


夜がまだ続くのなら


泡になって消えた


子供用ベッドに座って


太陽の約束を思い出す


また帰ってきたいね、ここに


空の毛細血管が


風景の中に滲んで


あの音


1と0、そしてまた0と1


夢から覚めながら夢への祠を開く瞬間


降る光の雨


葉脈を透かしては


繋ぎめを縫いつけて


不安だったね


大切だったね


ダイブ


細胞が一斉にしずかになった


記憶の灯を抱きしめて


もう戻れない


誰かになりたい


ここにいる?


言葉はもう言葉じゃない


君の花に名前をつけたい


ただ前だけを見て飛べ


もういないんだよ


たくさんの悲しみが膨らんでは弾けた


全部夢だった


でも尊い


缶コーヒーを飲みながら


溶ける煙草の煙、青い、青い、青い、沈む、沈む、沈む


迷子になりたい


ようこそ赤ちゃん


窓を開けて鳥を逃した


どうしても失いたくない小さな命


どこから見ても夕日は赤い


どうせ変化しているんだから


もうすぐ雲を抜けて


思いもよらなかったこと


あれとそれをくっつけて


まだ見たこともないような


贈り物をしたい


通り過ぎる


君に会いに行く途中


小さな春の台風が幾度も幾度も渦を巻く


自転車


揺れていることに今気付いた


大きなりんごの木、ざわざわ


季節が変わって羽根が開いたら


あの物語を更新しにいこう