日報

あるいは遺書

りゅう

デオキシリボ核酸

花びらをあつめる


時間を戻すように


陰影に抱かれて


何度も同じことを繰り返すうちに


夢と現実の境目は混ざり合って


思ったことだけが本当になる


本当の嘘になる


太陽の周りを回る日々


匂いに敏感になる


何気なく漏らした吐息の中に


デオキシリボ核酸


事象の地平


海と空の間


どこか遠くに消えた人


何も欲しくない


ただ落ちていきたい


右と左の区別がつかない


もう戻れない


今は照らさないで


自分が自分であることやめる


風景がいつもとまったく違った意味を持つようになる


言葉よりも声を感じていたい


極小の粒の一つになって


やわらかい波動に包まれる


ゆれる舟


月明りを浴びて育つ植物


喜び、恐怖、細胞がざわつく


窓を叩く幽霊


昆虫の足音


赤ちゃんがくる


目に見えないほど小さな天使が


この体を通して


何か信号を発している


オルゴールのような回転するもの


天気輪の柱に沿って


はじめよう


内臓や筋繊維や身体中のあらゆる部分が同じ方向を向いている


運命を受け入れる準備をしている


祈りとも言えないような祈り


あなたは誰ですか?