神様の音階
あの懐かしい
白いところにまた行きたい
清流の底に花は揺れて
光る海月が風に飛ばされていく
がらくたの山に腰掛けて
ゆっくりと錆びていく匂いを嗅いだ
誰かがわたしに歌をもたらした
ここにあるものとここにないものの差分が
神様の音階となった
わたしは昆虫になって
右足と左足をそれぞれ交互に動かす
距離や時間はほどけて
風景の中に混在するさまざまな鼓動や吐息に耳を澄ます
この世界は気配に満ちている
一歩踏み出すたびに龍脈の感触が変わり
色と色のどうしようもなく混ざり合う彼岸で
その悲しみをわたしは大切にしていた
素粒子が一斉に渦を巻いて踊りだす
光の雨が空に昇っていく
木々が指し示すようにざわめいた
旅に出なくちゃ
心と夢の境界に佇む君を迎えに行くために
火を灯せ
両手をいっぱいに拡げて
わたしはわたしの影と一つになった
このゆらめきを抱きしめたい
安らかな青