日報

あるいは遺書

りゅう

どちらでもないもの

粛々と家事をする


光の雨が染み込んで


隠れていたものを


丁寧に見つける


学校も図書館も閉鎖されて


不要不急の外出はお控えください


桜が咲いた


子供たちは旅に出る


虹の橋を渡る


昆虫の足音


蔦の絡まった日本家屋


素粒子のゆらめき


甘い香り


火葬場で燃やされた君は


そうしてまた地球を構成する要素の一つとなって


清潔な空気をわたしは呼吸する


カーテンが春の風に揺れる


踊るように


白と黒のまだらを集めて


どちらでもないものたちを飾って


壁につくる影で遊ぼう


横たわる


逆さまの世界


心臓が音を立てて時計の針を進める


名前の知らない花が咲く


夕方5時に取り残された隅っこ


暗がりで鮮やかによみがえるもの