日報

あるいは遺書

りゅう

君が自転車に乗れるようになった日

君が自転車に乗れるようになった日


僕は自分の匂いしかしない布団を出て


風の抵抗をなくした鳥と


愛について語り合った


お日様の白さは少し怖くて


あたたかかった


僕はなんとなく孤独になった気がした


君が自転車に乗れるようになってよかった


幽霊たちが集まってただ座ってるだけの部屋


蜘蛛の巣がかかってかび臭い誰からも忘れられた部屋


ある者は窓枠から漏れ出す光を浴びて


ある者は暗闇の中に佇んでいて


ある者はその白と黒の間の陰影を泳いでいた


彼らの間に声はなく


彼らの顔に表情はなかった


必要がなかった


ただ埃だけがきらきらと降り積もる


世界は今日も廻っているって本当?


人工衛星の欠片を拾い集めて


割れそうな頭痛の中で清潔な青を呼吸した


人々の生活は泥の中に呑まれて


すべての経済はストップした


慈しみの波


悲しみと怒り


僕は疲れているんだろうか


河原で銃を拾ったらどうやって使えばいい?


これがあれば大切な人を守ることができるのだろうか?


力が上手く入らない


思考が追いつかない


天使の姿を見た気がした、確かに


いつものように人々は、夕飯の材料を買い込んで帰路につく


言葉は魔法だ


自分でも気付かないうちに僕は君を信じていた


1万年後の僕たちはどんな風に他人を愛すんだろう


100万年後の僕たちはどんな風に


砂漠に不時着した飛行士が出会った友達に向けて詩を詠む


夕暮れの少し前、何かの予感に影が飲み込まれて


全部が青く見える