日報

あるいは遺書

りゅう

失われ

目には見えない小さな子供たちが


僕たちの沈黙を淡く金色に染めて


眠っていた記憶と再会する


それは新しく解釈される


星の巡り方によって伝えられた通りに


影は白く塗られ


夕刻の街は青く染まった


買い物袋を提げ


忙しそうに通り過ぎていく人々


口からファンタの泡を出し


男の子と女の子は魚のように踊る


病気はもう治ったよ


寂しがらなくてもいい


最初から世界は君のものなんだから


さあ、絵本の中に行こう


不思議なトンネルをくぐって


隕石が落ちた跡を見に行こう


昆虫になって大地に触覚を這わせたら


どんな匂いがする?


言葉を紡いでいくように螺旋階段を降り


螺旋階段を降りていくように愛を発声する


元々あった形や輪郭は失われ


その失われ方を楽しむ遊び


扉を開けるとまた新しい扉があって


夜と朝が何度か交互に訪れた


白と黒が反転する感覚をよく肌で憶えておくといい


いつか何かの役に立つから


体の中身をえぐり取られて軽くなったら


風に舞うレジ袋みたいにどこにでも行ける


君の目の中に必要なすべてがあって


その失われ方を楽しむ遊び


海辺の灯火


なびく髪


忘れ去られたピアノの奏でる音の連続みたいな景色


偶然の導く悲しみと慈しみ


君は今神聖な姿をとる


さなぎから蝶へ


清潔な透明な体


見え始めたばかりの目で


色と色の境目にある曲線をなぞる


胸の奥にある太陽で世界を照らすんだ


戦闘機が離陸する


国境へ向けて


悲しい夢を見ないで


おぼろげな影を抱きしめる腕


君を救うものは未来からの記憶なんだ


僕たちは僕たちであることをもうやめようと思う


心の中の祠に祈りを捧げる


深い孤独の穴を内側から温める