日報

あるいは遺書

りゅう

春の幽霊

白い服を着た女性が海と向かい合っている


誰かが描いた絵に迷い込んでしまったみたいに


夜明け前の蝶が


真実を知った子供が


再び巡り会うみたいに


言葉は無力だと思う


深い青に血が混ざり出す


慈しみの涙


止められない不安が君を見つける前に


サーカスの綱渡り


昆虫


何でもいいから約束をしよう


私はここにいてもいいの?


春の幽霊に出会う


うららかな風


カーテンの隙間から陽が射して古い本を焼く


自転車に乗っているだけ


意識は流転している


コーヒーを飲む


引越し屋のトラック


死は生を形づくる要素の一つ


ほのかな光が赤ちゃんの部屋にそっと降り注ぐ


誰にも気づかれないように


呼吸そのものに自我を明け渡す


夜を飲み込んだ獣がこちらを見ている


手紙を出すよ


ただいま


壊れてしまった記憶を使って新しい夢を見よう


季節が訪れる前触れを手で捕まえよう


君と僕の透明についてもう躊躇はない


行こう


星を感じてみたい


暖かくていい匂いのする層へ潜る


君は間違っていない


光はいつだって歪んでいるんだ


悲しみはいつだって揺れながら来るんだ


行こう


目を覚ましていたい


ページをめくる、過去へ、未来へ


君は均衡を保つ


圧倒的な暴力と向かい合う人の目


二つの場所を行き来する翼


行こう


坂を下ろう


海岸線に沿って桜


会いに行こう


鍵盤の上を渡って