日報

あるいは遺書

りゅう

細胞の中にいる君へ

細胞の中にいる君へ


海を渡る風のような声で


宇宙の向こう側にある何らかの意志まで


もうこれ以上争わないで


もう何も思い煩うことはない


変化してしまうことを受け入れる


愛について考えることはしない


ただ耳を澄ますだけでいい


夏の日の記憶が自動的によみがえる


青い街に夕陽が射す


境目のない音の連なりが過去から未来へ


星屑、きらめき


ノイズが乗ったカセットテープ


鼓膜の震え方によって


何が必要で何がそうでないかを峻別する


白くなりたい


弱くなりたい


太陽が輝く


許してください


あなたが嘆き悲しむとき


どうかあなたがひとりぼっちではないように


畦道をとぼとぼと帰っていく


記憶は過去ではなく紛れもなく今ここにある現象で


魂がその波動に影響を受ける


変化してしまうことを受け入れる


あなたの苦しみに向けて言葉を与えてください


あなたの悲しみに向けて声を与えてください


今まで見えなかったものが見える


できなかったことができるようになりその代価として同じ分の領域を誰かに譲り渡す


逆さまの日常と白い影に愛着が形成される


暴力に満ちた日々へ


目も合わせずに他人にしがみつく君へ


たくさん本を読んだ


心の中の色んな街を旅した


痛みと光のシンメトリ


生まれるときの風景を夢の中で思い出す


まだ美しくも醜くもなかった頃の


友達になろう


地球の回転の上で


不完全な鎖


種は撒かれた


想像力の限り遊ぼう