日報

あるいは遺書

りゅう

どうせいつかは消えるのだとしてもこれを書き記さなければ前に進めない

どんな目に遭っても


できるだけちゃんとした生活を淡々と続けたいと願う


何もかもを失くして


薄闇の中で雲が流れるのをただ見ている


風が木の葉を揺らす音が聴こえる


誰かが心臓の部屋をノックする


僕の中の小さい僕、君の中の小さい君


どう考えても不可能な幻想を思い浮かべる


だけどそれはもうすでに実現されている


またあの場所に帰りたい


命の水が満たされていく


月が欠けては戻る


言葉は声のために


皮膚の下の赤黒い五本の指は知らぬ間に僕を操作して


あらゆる場所での夜と朝について


無数の星にさえ名前をつけるように


僕はここにいるよと


白い吐息やコーヒーの湯気


初めて二本足で立った日のことをもう憶えていない


初めて酸素が肺を満たした時どんな味がした?


忘れ去られた古い写真


森の中で


龍脈のリズムに合わせて踊れ


僕は僕を映し出す意識に完全に身を委ねて


時間旅行は続いていく


男の子、女の子、魚になった


やさしい黒い光


さようならという発音に含まれる温度を抽出して


どこにでもいける


僕たちは死者を食べる


植物みたいに


君が悲しい夢を見ないように


夜をもう一度凍らせるために


羽根が開いていく


触りたい


手を握りたい


止めどなく全身を巡る目に見えない力を交換したい


どうせいつかは消えるのだとしてもこれを書き記さなければ前に進めない


君が今日も健やかな生活を続けていればいい


君には退屈を愛する心があるから


列車はまた走り出して


僕と僕の肉体をどこか遠くへ運ぶ


移動すると落ち着く


僕を構成する素粒子が活発に飛び交っているのがわかる


どんな風景の上にも描かれるであろう悲しみや怒りや慈しみ


真実の裏にある別の真実


大丈夫、時間はたっぷりある、そう思っておくことにする


色んな方法があるよ


またどこかで巡り合えたらいいね