日報

あるいは遺書

りゅう

季節と季節の

花を可愛いと思う人の感性が可愛い


街の音を聴こうと思う


星の振動を


龍脈の蠢きを


季節と季節の変わり目は少しだけ現実感がない


電車の窓から


ひらひらと舞う青い蝶が見えた


優しい涙が細胞に満ち満ちて


記憶は透明に風景の中に溶け込む


遺書を遺します


宛先はないけれど


風に吹かれて、風を集めて


光の粒を食べる


植物のように


最初から夢のようなものだったのだから


桜でも見にいこう


柔らかな陽が射すところで


できるだけ静かなところで


また会いましょう


祈っていない時も祈っている


願っていない時も願っている


僕たちは移動している


僕たちは変わり果ててしまう


さようならという言葉に含まれる温度を


測りかねている


君の背中に


羽根がひらいていく


もう帰る場所もないんだし


もう触れる指もないんだから


もう誰も殺さなくていいね


少しだけ背筋を伸ばして


花を飾ろう


神様の人形のように歌う


空と繋がる方法を教えてもらう


コンクリートの上のざわめきが


僕たちの静けさをゆっくりと引き裂いて


またあの陰影の中に戻っていく