日報

あるいは遺書

りゅう

はみ出す


幾重にも重なった分岐


小さな窓辺


笑顔


太陽のような


それを食べる


悲しいリズム


扉が厳かに開く


後は憶えていなくて


淡い色の感覚だけがある


触れたい


想像する


確かにある


雨粒


夜と朝の交じり合うところ


声が届かない


解釈が揺れる


壊し合いながら


受容体を形成する


高いところから低いところへ


流れていくように


勇気がない


始まりを待っている


佇む影


あの歌を口ずさむ


大丈夫だと言う


何が大丈夫なんだろう


母親の腹の中でそれを聴く


目を閉じているのか開けているのかわからない


形が変化していく


まだ確かめてもいないのに


決めつけてはいけない


なんとなく後ろを振り返る


大きな影に飲み込まれる街

 

おじいちゃんの頃から

触れない


すり抜けていく


風の街


風景が恋しい


冷たい窓辺


丘の上から見下ろす


木漏れ日が揺れる


今なら全部わかるような気がする


影が落ちる


空が落ちてくる


今ここにあるから


シャボン玉の中で


貝殻をあげる


瞬きをする


スピード


愛と呼ばれたもの


仄かな炎


前も後ろもなく


道だと思っていたものは


もう未知じゃない


夕暮れの中で


夕暮れを呼吸する


死ななければいけなかった


でもそう考えてはいない


まだ浮かんでくる


正解も善悪もあり得ない


タロットみたいに


言葉が足りなかったこと


後悔を繰り返す


子どもの頃から


おじいちゃんの頃から


繋がっている


扉を開く


あの向こう側へ


それだけを思って

 

波動関数

どこにいるの?


窓の灯り


小さな雨粒が


代わる代わる


やって来ては去っていく


形を失う感覚


何度も反復する


触れた指先


細胞を修復する


円環を成す


太陽の欠片を食べる


不完全なまま結ぶ


愛と呼ばれたもの


増えた分だけ壊れていく


次の角を左に曲がる


その次の角も左に


自動販売機の灯り


誰かの記憶が混在する


まだ諦めたくない


蛙の声


ぬかるみの中で息をする


踏切を渡って


高架下をくぐる


シャッターを下ろした古本屋


街路樹が厳かにそよぐ


墓の街


誰かを呼ぶ


そこで元に戻る


不安定なリズム


波動関数


あなたとは会ったことがある


ここではないどこか


神さまの子どもたち


今はその途中