日報

あるいは遺書

りゅう

あの人の誕生日を過ぎて


少しだけそれに気づいた


脳は数を数えるだけ


できるだけ背筋を伸ばしていたいと思う


言葉にできないしするべきじゃないようなことを


言葉にし続ける繰り返し


何かに追われるように


ついさっきまで夏だった


それが意味を形作る前に逃げよう


懐かしい痛み


もうすぐ来る


波のように、光のように


水底の魚がうねる


網膜の端に虹を映す


透明な膜に包まれて空へ昇っていく


遠くなっていくことに何かの感触を覚え


それをすぐに手放す


いつの間にか手足は消え球体のようになる


あなたはそれを通過した


暗号


もう一度生まれ変わるために


優しい闇に飲まれる


あの約束は


いややっぱりやめよう


屋上で煙草に火をつける


その煙を吐き出す度に怒りはほどけていく


もう何も感じたくないな


質の悪い冗談みたいに


手を振る


濃い霧が辺りを包んで


何もかもめちゃくちゃに壊されて


でもそれは何となく正しいと思う


蔦が絡みついてゆっくりと締めつける


このままどこにも行けない


静かに嬉しい


無重力


考えるのが好きなら考えていればいい


頼りなく差し出された手


もう一度形を手に入れる


そうやって何回も終わらない


渦のように抜けていく