日報

あるいは遺書

りゅう

時計の針の音


柔らかな羽毛


粒子の震え


窓辺の水滴


コーヒーの白い湯気


やってきては去っていくたくさんのこと


あなたが一人で引き受けた苦しみを


みんなで少しずつ分けられたらいいのに


点滅するライト


よだかの星


どこまでも続く白い道


目を閉じる


静かに、気づかれないように


アスファルト、土埃


トンネルを抜けたら海


自転車に乗って


記憶を駆ける


夜と朝の交わるところで


また君に会いたい


まだ何かが足りない


匂いを探す


胎児の姿勢


みんな最後は同じ場所にいく


ゆるやかに分解されて


金色の風を捕まえて


その温かさに身を任せて


お誕生日おめでとう


はじめまして、ようこそ


雨が降る、しとしと


古びたお店の軒先で束の間の雨宿り


それから改札口から吐き出される人々をずっと見ていた


たくさんの傘が咲いては萎む


雨粒が水たまりを打って波紋が広がる


影はどこかに隠れている


ゆっくりと


時間をかけて染み渡る


思い出す


意識


あなたが失くしたもの


今どこにいる?


翅が開く


零れた花


ただあなたは前を向いて飛ぶんだ


蝶のように


柔らかな、小さな灯


優しい嘘


大丈夫、消えない


みなしごのゆりかごはゆれる


あなたが残したもの


水の中みたいに


屈折する光



白く無垢な存在


頼りない天使


いつまでも話そう


沈黙を使って


わたしの中のあなたに向けて


慈しむ


詩を編む


世界がだんだん良くなるように


白と黒の狭間に


指先を浸す


木立のざわめき


力をほどいて


もっと弱くなりたい


指し示す方へ


未知なる方へ