無題
花垂れの夜
命が消えるときに出す小さなひかり
露をたくさん吸った星が
窓をかすかに震わせている
影の中に隠れた影
虹色の輪郭がぐにゃりと歪んで
確かだと信じた日々
やかんから立ち昇る湯気が少しだけ部屋を温めた
深い森の中では
小さな異世界の言語が飛び交っている
弱い者たちがさらに弱い者を助ける
繋がっていたいときにはいつでもそこにいる
僕は風になる
風と僕との境目がだんだんなくなる
胎内の夢の温度を手離して
青白い波に冷やされていく
夜だかの星がちかちか
それを目印にして子供たちは空へ昇る
未来から過去へ
こんこんと湧き出し流れる水
春の幽霊たちが手を繋いで踊る
たんぽぽの綿毛が夜を滑る
オルゴールのねじを巻いて
ひとつひとつ記憶を浮かべてみる