最果て
靴紐がほどけていることに少し前から気がついている
煙草の煙が深い青に溶ける
おれは遠くばかりを見すぎていたのかもしれない
あらゆる樹木が空に手を広げている
空から降ってくる光の粒を食べている
そこからだとどんな風に見える?
最果てを目指した勇者はもうここにはいない
感情が水彩絵の具のように混ざりだす
音楽は一度しか流れない
どうか幸せに
白と黒のモザイクを散らした春
血が流れる
ずっしりと重くてねばっこい
他人の体温にまみれた悲しみが堆積する
街なんかとっくに沈んでいる
前だけを見てたたずむ君はうつくしい
水面に光の反射
神様の人形のように歌う
地球の公転を肌で記憶する
この川が流れていく方に行けば海へ出られる
名前も知らない鳥が空中に幾何学模様を描く
何もないけど温かい気持ちになる
それでいいかな
それでいいよな
なんだか足元がおぼつかない
夢の中にいるみたいで
君は今どこで何をしているだろう
誰かが誰かのことをいつだってそんな風に思う世界
夜になる前に家に帰らなきゃな