日報

あるいは遺書

りゅう

5/29

11時頃起床。昨日の夜から思考が負のループに入っており、目覚めた瞬間にもう二度と目覚めたくないと思い目を閉じたまま固まるも目は覚めたまま。腰も痛いし、仕方なく起きる。あまり覚えていないけど、また誰かにキレ散らかす夢を見た気がする。奈緒はまだ寝ていて、よく寝るなぁと思う。コーヒーを入れ、ヨーグルトとバナナを食べる。なすのブログが更新されていて、2日分一気に読む。なすの父の台詞に少し胸がじーんとなる。近頃はなすが毎日日記を更新してくれるので嬉しい。それから、かためさんのこの前遊んだ日の日記も更新されておりそれも読む。結構な分量があってなかなか読むのに時間がかかった(10165字あった)。毎回毎回この分量の記録を残してくれているのは本当に凄い。勝手に引用するけれど、「なんでいっしょに暮らそうと思うんですかってRからの質問に、だって好きだったらずっといっしょに居たいと思うでしょって。それはそうだけどKさんが言うと不思議な感じってR。なんだかその一言が引っかかっていて、こんどどういう意味なのかきいてみたい。」という箇所があり、どういう意味で言ったのか自分でもよくわからない。というかそのような発言をしたことすら完全に忘れている。しばらく考え込んだ結果、次のような結論に達した。ちょっと前までのかためさんの日記はカフカカミュの文体のようにただ目の前にあるものや動きを忠実に写実的に描写しつつ自分自身はそこに関与しない「観察者」というイメージが強く、感情や欲が欠落もしくは超越しているような印象があった。ところが、実際に現実の世界でかためさんと出会って生身のかためさんの知ることで、日記の文体とのギャップを感じ、驚きや新鮮さを覚えたのかもしれない。なので、今度それについて尋ねられたらそう答えようと思う。かためさんが自分でそう言っているように、最近のかためさんの文章は以前とは雰囲気が違うように思う。積極性があり、人間らしさというか、生き生きとした豊かな感性が伝わってくるような気がする。子どものような。その分、以前はあった文体から滲み出るような静謐さは失われたかもしれない。どちらが良いとか悪いはなく、そのどちらもがかためさんで、かためさんという人間は本当に広いと思う。かためさんの中に宇宙があって、その存在を感じる。ともすれば人が記号のように見えてしまう病気なので、こんな人がこの世にいるというだけで嬉しい。かためさんはかよこさんみたいな人になりたいと言うけど、俺はかためさんみたいな人になりたい。うち寄ってく?って言おうとして言わなかった下り、言ってよ~~~と思う。最後まで読み終わった後、嬉しい反面正直何とも言えない気持ちになる。なんだろう、自己嫌悪なのか。自分はこの中にいてはいけないんじゃないか、釣り合わないんじゃないか、邪魔な存在なんじゃないかという感覚。そんなことないよと言われればそんなことないんだろうけど、そんなこと考えちゃってる時点でかなり自分しょぼいなと思う。今は落ち込んでるからそう思うだけかもしれない。でも、それはずっと前から、最初に会った時から感じていることかもしれない。別にかためさんもなすも関係なく、そう感じてしまうのが自分のデフォルト設定なのかもしれない。でもやっぱり、今は頭がおかしくなっているだけかもしれない。その時は楽しくても、家に帰ってから自分の言動を思い返して自己嫌悪に陥るということがとても多い。ふと思い立って、思ったこと、考えたこと、愚痴のような文章をひたすら書き連ねてみる。自分の嫌な部分をほじくり返していくような作業で気が滅入る。だけど、次から次へと言葉が出てくる。一体何の意味があるんだろう、でももうそれくらいしかやることがない。2、3時間くらい書いていたと思う。こうやって言語化するということは誰かに知ってほしいということかもしれない。この時書いた文章はそのうちブログにアップするかもしれないししないかもしれない。
今日は、町田リス園の近くに最近できたカフェや図書館や野菜の直売所などが集まった「ウェルカムゲート」という名の複合施設に行ってみようということで、14時半頃奈緒が支度を整えて呼ぶに来る。髪がカールしている。リサイクルに出すペットボトルと奈緒の宅急便の荷物を持って、家を出る。この前ヨシに買ってもらった新しい靴下と、新しい靴。外はじりじりと照り付ける夏の陽気。風にもひんやり感がなく、季節の移り変わりを感じる。気の滅入るような文章を書き続けたせいで、外出しても考え事が止まらず、奈緒とも上の空の会話になってしまう。奈緒ごめん。頭の中に次々と文字が出てくる。仕方がないので奈緒がコンビニで宅急便やってる間も携帯のメモ帳に書き続ける。奈緒がタピオカ屋でジュース買ってくれる。ピーチヨーグルト、ナタデココトッピング、甘さ70%。奈緒ありがとう。バス停にはもうバスが来ていて、今にも発車しそうな雰囲気だったにも関わらず走ることを躊躇していたら目の前で行ってしまい、「あ~」と言う。「なんで走らなかったの」と言われる。バスを待ちながら買ってもらったジュースを飲む。喉が渇いていたようで、結構すぐ飲みきる。バスの中でも文章を書こうとしたが、酔うのでイヤホンして自分の曲を聴く。experiment04は中盤中だるみ。quarkは後半高音が不快なうるささ、修正したいけれどすでに公開してしまっている。ノイズキャンセリング越しのバスの振動音。バスの前方で日差しの欠片がゆらゆらと揺れているのを見る。隣のプロレスラー引っ越して部屋空いてるから引っ越してきなよ、となすにラインする。それから、なすが隣に引っ越してくる妄想を少しする。歓迎会はうちで鍋でもすればいいとか、仕事が煮詰まってきたら隣のなすの部屋で仕事するのもいいなとか。
10分か15分ほどして下車、イヤホンを外した途端に大通りを走る車の音がいきなり耳に飛び込んできて、一瞬ウッとなる。ノイズキャンセリング搭載のイヤホンに変えてから、街中でイヤホンを外すといつもこうなる。街の音量ってすごいんだなと思う、聴いている音楽よりも音がでかい。もう16時近いがお昼がまだなので、とりあえずカフェで食事を摂ることとなる。店員さん可愛い、笑顔で感じがよく、癒される。窓際のテーブル席は日が差してきているので、内側の壁に面したカウンター席に並んで座る。窓が超でかい。天井がやけに高く、人の声や食器の音が反響している。こういう「カフェの音」を好んで家でも作業用BGMとして流す人がいるらしいが、俺は脳みそをかき回されているようで頭がおかしくなりそうになる。奈緒はステーキプレートと紅茶、俺は薬師バーガーとホットコーヒーを注文。奈緒が包み紙にバーガーを入れてくれる。フレッシュネスバーガーで働いていたことがあるからこういうのは得意らしい。奈緒ありがとう。バーガーについてきたポテトを二人で分け合って食べる、ポテト異様にカリカリでめちゃうまい。「なんでこんなにカリカリなんだろう」と言うと、「二度揚げしてるんじゃない?」と奈緒。「りゅうは最近落ち込みぴっぴりゅうなの?何かあったら何でも言うんだよ」と奈緒に言われる。奈緒ありがとう。何について悩んでいるのか自分でもよくわからない。落ち込んでるのはいつものことだから……と言ってはぐらかす。今更ながら髪カールしてるの可愛いねと褒める。動画見ながらロング用の髪巻き機で一生懸命やったらしい、偉いねと褒めると嬉しそうにする。奈緒がポテトをつまんで、先ほどの自分の発言を忘れたのか「本当に美味しいねこれ、どうしてこんなにカリカリなの」と聞いてくるので、「二度揚げしてるからだよ」と答えて二人して笑う。
食後のコーヒーを飲み終わる頃にはもう日は傾き始めていて17時近い。図書館は恐らくコロナの影響で休館。窓から本棚に向けて直射日光がガンガン照り付けていて、本が焼けないか心配になる。野菜の直売所に寄って町田産のシイタケと町田産のカブを購入。いちごジャムに日光が照り付けていて大丈夫なのかこれと思う。この周囲にある建物のあらゆる窓がでかい。
奥の方に入っていくと小高い丘のような原っぱがあって、そのもっと奥には草むらを切り開いて遊歩道が続いている。草むらには雑草がこれでもかというほど生い茂っていて、まだ開拓されていない時の姿そのままという雰囲気、草いきれドクダミの花が咲いている。視界に建物や人工物はほとんどなく、人の気配も少なく、一気に田舎に来たような感じ、というかむしろ海外に来たような気さえする。家の近くにこんな場所があるなんて知らなかった、なすとかみんなで来たいなぁなんてことを思う。やたら背の高い雑草が風に煽られてさらさらと気持ちのよい音を立てる。そういえば今日はよく風が吹く。心をざわつかせるような風ではなく、静けさを感じさせるような風。歩道を進むと雑木林があり、絶対に蚊に刺されるだろうなと思いつつも覚悟して歩を進める。木漏れ日が宝石のように眩しい。人が少なくて自然が豊かな場所はいいなと思う。このまま真っすぐ進むと薬師池公園に繋がるらしい。リス園も薬師池公園も、ウェルカムゲートがある西園という区域も全部同じ四季彩の杜という会社が管理していて、他にもぼたん園、ダリア園などが近隣にある。ダリアは夏から秋にかけて咲くので、今度行こうねと約束をする。
雑木林を抜け、バス停のある大通りへと繋がる道を戻っていく。畑の脇を通る真っすぐの道で奈緒が立ち止まって、「直線だからちょっと走っていい?」と言う。50mほど離れたところから奈緒全力疾走。おっぱいが左右にすごい揺れていて迫力があった。せっかくなので俺も走ってみることにする。全力疾走なんてめったにする機会がないので、どういうフォームで走ればいいのかよくわからない。靴が脱げそうになる。走り終え、肩で息をする。爽快感。
前を歩くおばさんが木の実か何かを採集しているのを後ろから見る。奈緒が唐突にバドミントン部だった頃の基礎練(反復横跳びみたいなやつ)をしだす。
大通りに出て、バスには乗らずに町田方面に向かって歩いていく。毎年リス園の帰りに歩いた道、何度も一緒に歩いた道。植え込みの中に生えている雑草を指さして「ミイラみたいな草ある」と奈緒。さなぎのような形をした茶色いつぼみがついている。「つぼみのミイラ、つぼミイラ」と呟いて、その響きが気に入って何回か歌うように口に出してみる。つぼミイラには西日がさんさんと降り注いで、なんだか神々しい。

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つぼミイラ

奈緒が頻繁に水を飲ませてくれる。奈緒ありがとう。
俺の靴がぶかぶかで脱げそうになるので引きずるようにして歩いていることに奈緒が気づいて、靴紐をぎゅっとしてくれる。奈緒に言われるまで自分が変な歩き方をしていることに全然気づかなかった。普通に歩けるようになって初めて今まで歩きづらかったんだということに気づいた。奈緒ありがとう。
この前なすと3人で即席路上ライブをした団地の前を通りかかる。あの時の俺の歌は最低だったなと思い返す。なすはそんなことないよと言うだろうけど、なんというか、苛々を発散するような形でしか歌えなくて、嫌な感じしか残らなかった。あれ以来でかい声で真剣に歌うということをしていない、ひょっとするともう、そんな機会はないのかもしれない。歌を歌うことを恥ずかしいと感じている自分がいる。
「ずっと平和でいられたらいいな」と奈緒が言う。それから、心療内科に行くことを暗に勧められる。それも手段の一つとしては有り得ると思うけど、なかなか気が進まない。薬を飲めば楽になれるのだろうか、一瞬楽になっても根本的な解決にはならないんじゃないか、酒に依存するよりはマシか、でも精神薬に依存して余計に病気が酷くなった人を今まで何人も見てきた、自分もそうなるんじゃないか、そもそも自分の心の問題を何とかしたいという気はあるのか、ないのかもしれない、もしないのだとしたら治療なんてしようがない、ていうか病院嫌い、精神科医ガチャはあるだろうし、赤の他人に自分の悩み事を相談するなんて嫌だ。そうやってうじうじ悩んでる自分のことが好きなんじゃないの、ということを言われ、確かにそれは否定できない。でも奈緒からしたらそりゃあ嫌だろう。多分俺がまた失言をし、変な空気になって少し黙る。奈緒ごめん。
だんだん風景が都会になってきて、町田駅周辺まで辿り着く。久美堂で中村文則の新刊の「カード師」を購入。奈緒がDポイント全部使っていいよとカードを渡してくれる。奈緒ありがとう。ポイント全部使ってもらっていいですかと店員さんに伝えると「では全額ポイントからお引きしますね」と言われ、残額200円か300円くらいを想定していたので驚いて「オッ全額!?」とでかい声で言ってしまい、そしたら店員さんも驚いて、「あっ全額でよろしいですか!?」「あっ大丈夫です!」とわちゃわちゃした感じになる。まだ高校生くらいだろうか、素朴な笑顔がすごく感じのいい店員さんだった。かわいい。わちゃわちゃしたことにより多少和やかな雰囲気になり店を出る。あの店員さんはきっと俺と奈緒のことを「仲睦まじく微笑ましいカップル」と思っただろうと、なんとなくそういうことを思った。あの店員さんは、俺が夜中に錯乱して家を飛び出したりしていることを知らない。あの店員さんは、俺が家具を破壊したり壁を凹ませたりしていることを知らない。
家に帰りつく頃には19時近くになっている。それでもまだ茜色の空が見られる頃合いで、全然明るい。日が長くなったものだと思う。近頃は外出するたびに毎回日が長くなったものだと言っている気がする。普段全く運動をしていないので足腰の疲労感がすごい。全力疾走もしたことだし、明日確実に筋肉痛が来るなと思う。久しぶりにこんなに歩いた。豊かな自然にも触れて、良い気分転換になった気がする。朝の悶々とした状態よりは肩の荷が下りたというか、少し視界がクリアになった感じがする。連れ出してくれてありがとうと奈緒にお礼を言う。
ウェザーニュースイブニングおさや、ラスト1時間しかないけど観る。もう俺の生きがいはこれしかない。おさやの「~~しましたねー」と言う時の語尾の「ねー」に優しさが滲み出ている。癒される。おさやがいるから生きていられるのだと本気で思う、おさやありがとう。五月晴れの五月は旧暦の五月のことなので、本来は六月梅雨の晴れ間に使う言葉らしい。同僚や周りの方に使ってみてくださいとおさやが言っていたので、とりあえずこれはブログに書いておこうと思う。途中で北海道で震度3の地震があり、雑談からの緊急地震速報への鮮やかな切り替えを見ることができた。いつもウェザーニュースは作業しながら流し見で見ることが多いので、その瞬間をリアルタイムではっきり見れたのは初かもしれない。かっこいい。でも「淀屋橋営業マン」さんのメールが今まさに読まれようとするところで、尺の都合でそれがなくなったので、「淀屋橋営業マン」さんドンマイ……と思った。あとは、Googleの画面を間違えて出してしまい「おろろろろ」と言っていたのがよかった。
昼が遅かったこともありお腹が空かないので先に風呂に入る。ぴよっち(相模湖の射的屋で手に入れたあひるのおもちゃ)は今日も元気に泳いでいる。晩ご飯はさっぱりめに、冷蔵庫の余りものと今日買ったカブでポトフ。奈緒がつくってくれた奈緒ありがとう。カブはでかいの選んだので量がめちゃ多い。今まであんまり食べたことなかったけど淡白な大根のような味わい。量が多いとは言えお腹にたまらずするする食べれる。「水みたいなもんだね」と奈緒、そんなことはないだろうとは思いつつもそうだねと同意する。シャウエッセンのソーセージプリっとして美味しい。ソーセージの量が二人で平等になるように0.5本分けてくれた、奈緒ありがとう。かためさんの日記で奈緒の一人称が奈緒なの似合ってるって書いてたよ、と教えてあげる。奈緒喜ぶ。
なすがこの前送ったexperiment04に「palm」という名前を与えてくれる。手のひらという意味らしい。いいなと思う。手のひらか。全くそんなイメージはなかった、でもそう言われてみると確かにそうだ、と感じる。もうちょっと手直ししてから公開しようと思う。どうせほとんど再生はされないんだけど。

今日の日記はだいぶナイーブというか、書かなくてもいいようなことをたくさん書いてしまった気がする……。