日報

あるいは遺書

りゅう

忘れていた約束

冬と春の混じり合った朝の気配


失われた海の上で目覚めて


羽根があったらいいのにと思った


さざ波とひとつになる


鼓動の上に静かに音符を乗せていく


誰もいない


窓枠から光


虹色に光る白に近いところに触る


生きている人も死んでいる人も


昆虫の足音


誰からも愛されなかった子も


深く温かい穴の中


小さくて勇敢な鳥


風を切って


忘れていた約束を思い出した


僕の夢と君の夢の交わるところへ


風に抱かれて


花を飾った病室の匂い


その静謐な扉


言葉が必要だった


すくっては零れる光


いなくなった後も頼りなく輝く


裸足で花びらを踏んで歩く


未来から過去へ日記帳がぱらぱらとめくれる


会いに行かなくちゃ


言葉にならない言葉が必要だった


風の真ん中で


金色の粒を食べる


横たわる君の影を慈しむ


風景は後ろへ、後ろへ


僕の失われた海と君の失われた海の交わるところへ


迷子のまま行こう