日報

あるいは遺書

りゅう

優しい鏡

体温に近づいていく


綺麗な石を集める


宇宙に抱きしめられて


寝ても覚めても


そのことばかりを思い出す


まだ名前のない塊だった頃


季節は新しかった


それは小さな祈り


誰にも見つけてもらえずに


雨粒を見ている


穴を穿つ


靴ひもはほどけたまま


それでも行かなきゃ


存在した理由を集める


デジタル時計の点滅


鳥が鳴く


またここにいる


天井を見ている


命の残骸が床を埋めていく


埃が溜まっている


咳をする


がたんごとん


切り替わる景色


間違いだと思ってた


うまく伝えられなくて


無駄に言葉を費やす


それからゆっくりと気づく


誰に謝っているの?


どんな天気でも


あなたはただ佇む


近づけば近づくほど遠ざかる


雨が上がれば夕暮れに虹がかかって


少しだけ驚いてみたりもする

 

そういう遊び

冷たく打つ


橙色の時間


掻きむしるように


父親が子どもに言うように


痛みを伴うこと


ブランコが揺れる


揺れていないものなどない


温かな夕餉


ずっと君と話がしたかった


この世界の欠片として


綺麗なまま汚れていく


嘘をついて生きる


壊れた遊園地で


夢日記を書く


自転車に乗れた日を


覚えていない


滴る朝


絵を描くように見る


本当は全部関係がある


保留のまま


闇がやってくる


こうして隠れていればいい、今は


失くさないで


数えたって意味ない


そういう遊び


心の中にいる人


身体の中にあるもの


螺旋状に絡まる


教えてください


信じてください


物語を剥ぎ取られ


存在ただそのものになる

 

2人の自分

何度も同じ音楽を聴く


静かな暮らし


忘れていくことはとても簡単で


雨の日でもちゃんとカーテンを開ける


咲いた青


喉の奥で木霊する


それが終わった後は


もうどこにも帰らない


傷つかない存在


街の灯が光る


0に近づいたぶん0から遠ざかる


薄汚れた灰色の壁に懐かしさを覚える


目を閉じたまま歩いたりしてみる


不意に強い揺れ


水槽の水が跳ね


影が膨らんでは弾ける


赤ちゃんの記憶がよみがえる


しがみつく指


静かに降り積もり覆い隠していく雪


視点が定まらない


傷つける存在


ペンを置いた


繰り返し身を委ねる


走って帰る


ランドセルが肩に食い込む


夕暮れが追いかけてくる、でも遠ざけると近づく


そうして詩を編んだ


どうか夜を嫌いにならないように


巡り巡ってまたあの場所で会いたい


透き通った鼓動


目の裏の模様