日報

あるいは遺書

りゅう

透明な部屋

青白い部屋で


粒を拾う


音の階段は無限に近づいて


風が洗濯物を揺らした


優しさ


悲しみ


窓辺の雫を食べる


廻り続ける奇麗な玉


もうすぐ赤ちゃんがくる


静けさの準備をしている


透明な言葉を発音する


時計が針を刻むのが愛しい


満ちる慈しみの波


わたしの中の失われた海


硝子でできた飛行船


桔梗色の空と水平線の狭間で


きらきらと反射させる


春を纏った影をぴったりと抱きしめる


一つになる熱


もっと潜ろう


手のひらで輪っかをつくる


放課後のカーテンがゆらり


太陽の中に沈もう


最初の表情


りんごの木がざわざわと鳴る


今ここにあるもの、今ここにないもの


あるけどきこえないもの、ないけどさわれるもの


二重螺旋はどこまでも渦巻く


騙しながら


あなたに会えてよかった


詩にしてから初めてわかった

 

手づくりの光

さっきまでそこにあった温もりが


何かを示唆しているような気がした


天の川の白い靄をいっぱいに映した下流の方まで


このままいなくなりたい


淡く青く滲んだ街


透明な膜を被せる、幾重にも幾重にも


神さまの香りがした


からだはもう冷たくなって


膨らんでは萎み、何度も繰り返す宇宙


続きを選ぼう


きらきらと廻る色鮮やかな記憶の風船


桔梗色の空と水平線が交わるところで


音のない世界をどんな風に見る?


たっぷりと水を蓄えた細胞が震える


りんごの木がざわざわと鳴く


何かが起こっている


誰かが怒っている


いなくならないで


羊水に浸す、透きとおる清潔な翅


さよならと言った


放課後


水の中にいるみたいだった


静かに、消えそうに、佇んでいた


窓のない部屋に手づくりの光を灯して


いつでも


小さな声に耳をすました


簡単に壊れてしまうものを愛した


形のない影を交互に縫った


心の祠の中を旅した

 

神様の音階

あの懐かしい


白いところにまた行きたい


清流の底に花は揺れて


光る海月が風に飛ばされていく


がらくたの山に腰掛けて


ゆっくりと錆びていく匂いを嗅いだ


誰かがわたしに歌をもたらした


ここにあるものとここにないものの差分が


神様の音階となった


わたしは昆虫になって


右足と左足をそれぞれ交互に動かす


距離や時間はほどけて


風景の中に混在するさまざまな鼓動や吐息に耳を澄ます


この世界は気配に満ちている


一歩踏み出すたびに龍脈の感触が変わり


色と色のどうしようもなく混ざり合う彼岸で


その悲しみをわたしは大切にしていた


素粒子が一斉に渦を巻いて踊りだす


光の雨が空に昇っていく


木々が指し示すようにざわめいた


旅に出なくちゃ


心と夢の境界に佇む君を迎えに行くために


火を灯せ


両手をいっぱいに拡げて


わたしはわたしの影と一つになった


このゆらめきを抱きしめたい


安らかな青