日報

あるいは遺書

りゅう

自分自身がこの世界にアクセスしているという感覚を忘れてはいけない

通りには色彩豊かに、祝祭の香りが満ち満ちている。ライセンスを希求する。言語を持たない大多数に心を開いたことがあるか。柔らかな影をつくり、すべての輪郭を曖昧にしていく、溺れる。息しかできない。犯罪者だったことがあるし、動物だったことがあるけど、風が冷たい、会ったことのない森を懐かしく思ったり、対象のない恋をしている、自我を粉々にしながら。世界中に子守唄が鳴り響いて、反響して、時空を歪めて、人類が滅べばいいのに。おいお前は誰でもないぞ、名前なんて最初からなかったんだ、記号の四角い壁が迫ってきて閉じ込める、すべてを突き抜ける一筋の光というありふれた希望というか奇跡を、体験しようよ、興奮している。だってさ、証明なんてしなくていいじゃないか、姿を見るよ、君の姿を、動作を、質感を食べるよ、そのことをどれだけエキセントリックに君に伝えられるか、そこが問題だ、さあ、また会議が始まったぞ。懐疑的な。夜が冷やされて食べ物がおいしくなる、ただすべては無機質に沈黙して、可愛らしい、隔てているのは君たちじゃなく、ぼく。でも余計なんだよ、たまらなく走り出す、愚かな臆病者。見ているぞ、悪い存在や良い存在が、混ざり合いながら、複雑な軌跡を描いて、常に予測を裏切りながら、全身の目を開いている。そうだ、皮膚を覚醒させなければならない。雲はあんなにも遠いけど、ぼくはなんでも美味しく食べられるんだ、おばあちゃんにぼくのことを教えたいな。ぼくはいつだって簡単にガキになれるし、すべての物事とその動きを反対から眺める視点を知っている。本の中には載っていなかった、それは細胞の蠢き、一つ一つ、個別に認識され、目覚めた、それらの、反乱。隠れている場合ではない、侵食してきて頭がおかしくなりそうになる、たくさんの色のついたぐるぐるだ、色彩は美しい。旅に出たいと思うんだ、いつかは、ね、理想だけを動物のように追い求めてみたい。明るく照らすなよ、悪魔が潜んでいる、裸の中に、マリアナ海溝の底に。目に見えないものを信じている人は、実際にUFOと交信することができる、実際にだよ、思想とか言葉は必要なくて、実際に、リアルに、ありありと、厳然として。俺はそういうことも全部わかっている、けどそれは5秒後にはもうなにもかもどうでもよくなってしまう。なんていうか、不安定な煙が、震えるのを見る、風を読む、読むだけ、あとは何もしない、そんな日、今日は。国境は越えるためにあるし、衣服は脱がせるためにある。スタジオジブリの最新作を一緒に映画館に見に行く約束をした。透明感のある動作、今にも消えそうな喜びの表現、どんな時でも平和が手に入る。冬の気配の風が内蔵を撫ぜた。何らかの理由で諦めた人がスケッチする空や吐く吐息、ロケットが宇宙へと飛翔する、蝶が大気を羽ばたく、それは景色。家族たちが回転寿司屋に入っていく。とても小さな月の独特の色彩。中学生の自転車。今なら時空のどこへだってアクセスできるような気分になる。失ったものを、細部に渡って一つ一つ数え上げながら、まどろむ、窓辺。柔らかなメロディーを浮かべて、すぐに削除する。冷たい手足、不鮮明な笑顔の画像。優しく凍っていく時間。ゆっくりと揺れているそれを判別する、アプリケーションを開き、広がる地平線を見渡す、そうしていつまでも永遠に駆け抜けて、駆け抜ける姿を封じ込める。赤ちゃんを閉じ込める。廃墟の街を探検して、0の感覚を手に入れる。0の生活。0の素粒子の揺らめき。思い出のマーニーがヘラヘラしていても、仕方がないと思うだけ。そこにドラマを創造しない。ゆったりとした死に身を委ねる。洞窟の奥、地下の静止している水面、モノクロの大気、そのもっと奥、もっと深く、言葉を振動させず、ゆっくりと吐き出す、そうするとどこからか風が吹く。止めどなく呑み込んでいく壁にめり込んで、新しい五感を生む、産み捨てる。俺は魔法使いだ、魔法使いだぞ俺は。露出している皮膚がざわざわと戦慄いてうるさい羽がバタバタと、もうすぐあっち側に行けるんだと思い続ける、消滅しない、圧倒的な塊を飲み込む。欲望の渦、鮮やかな光、美しいとか醜いとかそういった価値観の二重螺旋が永続的に、消滅しない。輝いている思い出を材料にして何年もかけてオブジェを作り上げよう、きっと気持ちが良いぞ、生きていてよかったと思うことができるぞ。眠くなる女の子、囁き声、窓の外のオレンジ、侵入してくる風、細い隙間から幾度も幾度も幾度も柔らかくて弱い部分を刺激する。そして二つに割れる、闇と光とか色々対比させられるけど、実は正体はよくわからない、それは、君に自信がなくて優柔不断だからだ。大丈夫じゃないことを大丈夫だと言え。全く静止したまま転がり続ける意志を持たない悪魔が、その複眼を全方向に向けている、その時着信が鳴り響き、君はハッとする、ハッとしたけど。カレンダーを埋めすぎたと思った、感傷的なメロディーが通り過ぎ続ける電車の隙間から、大気を冷やしていく。まんまと乗せられている。奇怪な集合的無意識の触手に、されるがままになりながら、次に続く言葉を考え続けていた、その間にも街は機能し続けながら太陽は少しずつ下へ、落下してきている。目に見えない領域がある、そこを通過したときに、君は変化してしまう、今まで理解できなかった物事を五感ではっきりと知り、家族や、思い出や、固有の風、約束をすべて忘れる。なんとなく気持ち悪いと感じて、それを遠ざける、自動的に時間と共に、だんだん遠ざかって、そのうち天文学的な距離になる。時計の針がチクタクと鳴る瞬間、その瞬間に肉体と魂を浸して、自由な感じがする、柔軟になって、どんな細い隙間も通り抜けられる。だけどその先にどんな景色が広がっているのかはどうでもいい、君は最強だから天敵がいない。君は部屋をつくり始める。綺麗な色の貝殻を拾ってそれを飾る、綺麗な色の光線を閉じ込めて、弱く放射する。四方の壁はそれぞれ完全な調和でストリングスを震わせる。君は熱いシャワーを浴びる。普通とか特別とかが排水口から流れ出し、他人が一人もいなくなった。一人残らずだ。仕方なく君は、目に映るすべてを描写し始める、不完全な言葉で、部屋の中に新たな部屋を作り、止まらない。止まらなくなる。けれど以前とは違う、パニックを起こさない、脳細胞は奇妙に冷えきっていて、しかもそれを意識することがない。恐ろしいほど集中している。自分自身がこの世界にアクセスしているという感覚を忘れてはいけない。手始めにぼくは、窓を創造してみてはどうかと提案する。この世に唯一現存する魔法は果てしないミクロの中にある。声を荒げれば、そのぶん現実から遊離していく。