日報

あるいは遺書

りゅう

野良犬は光と闇の戦いにいつまでも無頓着だ

深刻な自己矛盾のるつぼの中で、今日もいらっしゃいませと言う。いらっしゃいませこんにちは。それはもはや鳴き声のように、あらゆるものが必要ない、何の躊躇いもなく、論理性や因果関係もなく、ただ完全に閉じた、美しい世界。俺だって酒鬼薔薇聖斗になれるんだぞと思う。君だっていつかは酒鬼薔薇聖斗になると呪いをかける。それはインフルエンザのように感染していく。俺はすべての動作をしたいと思っている。歩いたり、走ったり、サーフィンをしたり、告白をしたり、歌を歌ったり、号泣をしたり、さよならと言ったり、ポケモンをしたり、匂いを嗅いだり、赤ちゃんになったり、深く潜ったり、乱雑に振り回したり、思いやりのある言葉を喋ったり、馬鹿を殴ったり、ゴミを破壊したり、鏡に向かってお前は誰だと言ったり、缶コーヒーを飲みながら横断歩道を渡ったり、傘を差しながら本を読みながら煙草を吸ったり、頭を撫でたり、セックスをしたり、排泄をしたり、マゾオナニーをしたり、考えたり、回転したり、空を飛んだりしたいと思っている。同時にだ。すべてをこの一瞬にかけて、すべてをこの一瞬に閉じ込めて、ぎゅっとして、すべての体験を解放したいと思っている。身体中のすべての目を覚醒させていたい。その時ぼくはぼくでなくなるのだろうか、そうすると法律で処罰されますか?月の綺麗な澄んだ夜に、公園の遊具に登って、空気を寒がる。俺は、自動車や電車によって粉砕されないと思っている。俺は、狂気に取り憑かれた人間や発展しすぎた人工知能によって、内臓を暴かれることがないと思っている。俺は、今横たわっている温かな布団の中が、二度と出られないコンクリートの箱の中ではないと信じているし、野良犬は光と闇の戦いにいつまでも無頓着だ、俺は飛来した隕石に潜んでいた未知の病原菌に感染することはないと信じているし、俺は日本は沈没しないし人口が増えすぎて食糧が足りなくならないし原発が爆発しないと思っている、たとえ万が一爆発したとしても、ただちに影響がないような気がしている。ワンダフルバイノーラルスローライフ。世界のどこかで戦争が起きているのと同じように、頭のどこかでも戦争が起きているし、常に、そのことに気付いていることはない。大切な子供を目の前で犯され、殺された記憶が、マーケットに出品されていた。それを買いますか?野良犬はまだ欠伸をしている。大丈夫な奴は大丈夫だし、大丈夫じゃない奴は永遠に大丈夫ではないよ、日常っていうのはこんなにも広くて白いんだから、早くキャンピングカーを買って、どこまでも逃げ出したい、自主性が重んじられているから。おばあちゃんの家の時計が今もなおチクタクと言っている、それを海の底で聴いた、温かな、自然なイメージだ。あまりにも当たり前にできている、法則、神という概念、悲しみは乾燥して火がつきやすくなる、古ぼけた喫茶店で無口になる、ゲームを繰り返す。微細な音の中に入ったよ。君のママはもういない。温かな、自然なイメージ。血生臭い排泄物。留まるところを知らず重力に抵抗し、発展する。夜は眠ればいいのに、そうしない。底抜けに明るい犯罪者。意識は容易く分裂するぞ、気をつけていろ、身体に力を入れていろ。突然の猛スピードが、感情を喚起して、細胞を泡立たせる、そういうとき決まって身体の表面は冷たくなって、鼓動の音がいやに鮮明に聞こえ出す。異物が飛び出している、衣服の隙間から、外界へ、発展している、重力に抵抗している、大気圏の外へ、安全ではない場所へ、神か悪魔か、わけもわからずに必死でコンタクトを取る。語りかける言葉は呪文のように執拗に、早口に、混ざり合い、惨めに。子供の目はピントを合わせた。夜の中、愛の中、非現実に惹き付けられ、表情が、骨格からねじ曲がっていく。ぼくは飛び乗った、早い、だんだんと呼吸のリズムがずれて、何になろうとしているのか、なにかを思い浮かべて、すぐ消した街。会いたいのは物質でとぼけている、雨が路面を濡らしようやく生き物になったとき、一線を越えた、家族が残念がっていた。誰かを呼ぶ傘の下、影の挨拶が不必要に連鎖し毎回回転するしたり顔の嫌な先輩、煙草ばっかり吸いやがって、煙草を吸いながら思う。風景は光に濡れてキラキラ、我が家がほしい、静止が欲しい、それを売ってくれ、今すぐ届けてくれ、着払いで送ってくれ。本能を燃やす、童貞だった頃からまるで世界のことをなめていた、舌なめずりをしていた、お腹がすいて、子供になって、ぴょんぴょん跳び跳ねた。健康な身体は戦争と一緒に変なことになっていく、思い描いていた様子とずいぶん違うけど、本当に手に入れたいものが何か、最初からイメージできなかったから、だめだった、だから諦めが好きになった。諦めと友達になった。秋が好きになったよ。さんぽ。ノートの中身を解体していく、脳みその中身を、搾り取って、天日干しにして、徘徊する夜、大切な情報がどこにもない、不安定な震える記号がどこにもいなくなってしまった。叫び出しそうだよ、通りすがりの女のおっぱいを突然触ってしまいそうだ、でもそんなことはしない、自信があるから。昆虫のようにたくさんの足で這ってみたい。わがままな君はいつまでも眠ったまま冗談を言って、可愛いな、ぼくは半身不随になる、病気になってもいいかな。何か巨大なもの、そうだ、たくさんの影をつくる巨大な建造物。隙間をすり抜ける風に乗ってこっそりと欲しいものを手に入れよう、呪いや愛を水彩絵の具で溶かして、べったりと塗りたくる、下品に、音を立てて、破滅的な気持ちで。降下しろ。青空の下で、すべてのものを見下して、止めどなく土に潜りながら、汚れながら、居酒屋の大きな声を、濡れた眼差しを、巧みな跳躍を、筋肉のしなりを、愛して。ねえ、愛して。甘くなる、そして頭が痛くなる。脳みそがちんこに移動して、自己愛や自己嫌悪をすべて喪失して、その喪失感を日がな感じている、窓辺で、参加することなく、泣いたり、ため息をついたりして、冬の気配をちゃんと感じている。ざわざわして鬱陶しい内臓が閉じ込められて、原初の記憶を思い出して、それを手に取って遊ぶんだ、白いキラキラが不規則に綺麗で、自動販売機で温かい飲み物を買ってあげる、ぼくはいい人だから。これからどこに行こう、これからどこに帰ろう、なんて言おう、何を見よう。反対から聴こえる音に耳を澄まして、音楽は時間に縛られている、常に時間が刻まれている、常に食べられている、いや食べている?どっちでもよくなって白骨化した後発見される。老婆の割れ目が語り始める。下水に手を突っ込んで指輪を探すように、文明自体が麻薬に汚染されているのなら、右や左の方角をいちいち書き記すよりも、むしろ君は今から責任を放棄して、より愉しく、より健やかに、絵の中の子供のように、ガイドブックを書いてくれ。地球の歩き方をぼくのために書いてくれよ。そうするべきだ。ベロを出す。唾液腺。列車より早く飛行機より高い、つまり最強の魔法、それを唱える唇の赤、果実のような。まだ選択されていない枠組み、カーソル、銃を持つ手が震える、その震えにこそ生命が宿るような気持ちになる。気持ちが変化する。温かな、冷たい、温かな、冷たい。考えろ、考えることをやめないで。晴れた日の朝に、影響されている、回り道をして転んだ、裏切りが支配している、壁の中から声がする、靄を掻き分けて逃げる、不鮮明な旋律を追いかける、何かわかったような気になる。恩恵を欲している。十字路を出鱈目に曲がる。愛の言葉を数種類用意する。天災を待っている人が大勢いる。怒りに身を任せる人が大勢いる。現実はここにしかない、目を開けろ、現実はここにしかないんだ、いつも。存在が綻ぶ。母の輪郭が乱れる。気付かぬうちに刻印が増えている。ダメージを受ける毒の沼が多くなっている。黒い雨が降る、その色を識別する高性能のレンズ。滞る工場のレーン。ぼくは仕事中にふざけている。お前の人生はそれでよかったのか。罪と罰があらかじめ用意されている。悪徳が皿の上で栄えている。ウィンドウショッピングやエアギター、芸術家。ぼくたちは空っぽに慣れすぎた。ぼくたちは反対から眺めすぎた。ぼくたちは子供のことをなめていた。はいかいいえしか存在しないわけじゃないのに、冷凍庫の中みたいに、静かになりすぎる。ぼくは誰にも信じられていない、いや、むしろ誰もが人を信じることを必要としていない。誰もが、気楽に呼吸している。テレビドラマをチェックしている。犯罪者になりたいのか、違うだろ、身体を小刻みに揺らして、リズムが産まれる、悪いリズムが。吐く血、周りの全部が誰かの土地で、ぼくは居場所を買う、月々。厚い雲は誰にも触れないからそれでいい、孤独な王様は柔らかい目をしている、アンパンマンのマーチが始まる。唐突に君は家を出る。ぼくは結びの言葉を考えるのが下手くそだった。